新フィールドノート
−その36−
海上の森に関する環境アセスメントについて
名古屋大学情報文化学部 広木詔三
現在、愛知万博に関する環境アセスメントが進められている。来年(1999年)に施行される環境影響評価法の精神に則って行われるという。確かに、従来より改善されている面もある。従来は、調査等の結果をもとに作られた準備書が出されてからしか意見を述べられなかったのが、調査の実施計画の段階で、その方法等に意見を述べることが出来る点や、調査項目に生態系が加えられたことなどである。
しかし、新しいアセス法においても、計画アセスではなく、いわゆる事業アセスと呼ばれるものである。つまり、代替案を考慮せず、事業者がアセスの評価を行うなど、従来の重大な欠点が改善されていない。
愛知万博に関しての最も重大な問題点は、関連事業に関する点である。愛知県は、愛知学術研究都市構想という開発計画の一環として、海上の森に住宅建設を予定している。万博のメイン会場の使用後に住宅地として利用するのである。もう一つの大きな問題は、名古屋瀬戸道路というメインの道路を計画しており、この道路は海上の森のど真ん中を通ることになっている。さすがに森林への影響が大きいので、高架型にし、間隔を置いた橋脚を建設するということである。
実は、これらの道路や住宅は、愛知万博とは切り離されているため、愛知万博とは切り離されており、手続きだけの連携とされている。そのことの問題点は、新住宅建設事業のアセスを見ると一目瞭然である。今年の四月に、それぞれのアセスの実施計画書が提出された。愛知万博と関連事業のアセスの一体化とは、この実施計画書の提出の時期を同じにするというだけのことに過ぎない。愛知県は、すでに昨年までにアセスのための調査を行なっており、現状調査の報告書と影響の予測や評価についても報告書をすでに作成して縦覧している。本来ならば、実施計画書を作成して意見を聞いてから調査を行い、影響についての予測を行うべきところである。であるから、もうすでに調査と予測を行っているのに、その後で実施計画書を形だけ提出しても何の意味があろうか。愛知県は、不備な点は追加調査を行うことでごまかそうとしている。
ところが、縦覧された準備書や評価書が、これまたお粗末なことこの上ない。サンコウチョウという亜熱帯からの渡り鳥が冬場にも見られるというのである。さすがに、この点は、指摘されて改めたようである。
6月7日(日)に公聴会が瀬戸の市民会館で開かれた。公述人の一人が、縦覧された現状調査の資料を閲覧した結果、数多くの問題点を指摘した。果たして、これらの指摘がどのように取り入れられて改善されるのであろうか。この日の公聴会では、人の公述人の希望者に対して愛知県が人に絞った点に批判が集中して、公聴会の進行が大幅に遅れた。聞くところによると、愛知県は、その後人の公述希望を全面的に受け入れたそうである。従来のアセスでは、公聴会さえ済ませれば開発はゴーサインである。愛知県はただひたすら、公聴会を無事済ませることのみに専しているのであろう。
7日の公聴会では、さまざまな意見が述べられた。開発推進側の意見もあるにはあった。愛知県の最近の苦しい財政事情で、海上の森に狭くきわめて高い住宅を建設しても、果たして入居者が出るのだろうか、という疑問も出された。瀬戸市に作られたいくつかの団地でも、入居者の充足率が悪いというのに。
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