新フィールドノート
−その21−



岐阜県山岡町
名古屋大学情報文化学部 広木詔三


岐阜県山岡町で、ゴルフ場の建設が予定されている。ゴルフ場に反対の地権者による差し止め請求の訴訟が行われている。私は、原告側の証人の一人として予定されている。
 この訴訟は、1990年に提訴され、岐阜地裁で長々と引き延ばされた挙げ句、1995年に原告の訴えが却下されるというかたちで結審した。しかし、翌年、名古屋高裁で、原告適格が認められ、原判決は地裁差し戻しとなり、現在、新しい裁判長のもとで、再び岐阜地裁で審議が行われている。これまでは直接的な被害の明確な場合以外は、原告適格として認められず、門前払いとなる場合が多かったという。
 1990年に、野呂さんという弁護士さんから依頼を受けて、山岡町のゴルフ場予定地を視察した。標高500から600mの高原地帯で、コナラの雑木林からなる里山であった。5月には、ヤマツツジや可憐な白い花のオトコヨウゾメが咲き、林床には、チゴユリをはじめ様々な草本が生育していた。それは学生時代に歩いた東北の丘陵地帯を思い起こさせる。
 それが、昨年(1996年)、被告である御園開発株式会社は、既成事実をつくるめに、森林の伐採を始めた。岐阜県知事が地権者の同意を得たとして許可を与えたのだそうだ。ゴルフ場に反対している地権者は、同意はしていないと、知事を相手に行政訴訟を起こしている。
 私は、森林の伐採された予定地を歩いた。写真に見られるように、見るも無惨な光景であった。排水を良くするための巨大な管も用意されていた。これらの巨大な管をゴルフコ−スごとに埋めるのである。
 私は、法廷に立つのは、生まれて初めてなので、どういう所か岐阜地裁まで傍聴に出かけた。


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