新フィールドノート
−その15−



三宅島
名古屋大学情報文化学部 広木詔三


 「かけはし」を毎月欠かさず書きつづけるのはなかなか大変なことです。生協理事の箕浦さんに、続けられるだけ続けて下さいと言われて、「できるだけ続けるぞ」と決心はしたものの、最近、ネタ切れぎみです。
 今、伊豆の三宅島では村長選挙が行なわれています。この三宅島に米軍のNLP(離発着訓練施設)を造る動きがあり、推進派と反対派のそれぞれから立候補がありました。この原稿が日の目を見る頃には決着がついているでしょう。
 三宅島は、これまでに何度も紹介してきましたように、数10年に一度爆発を繰り返し、島のあちこちに溶岩が流れています。そして、この溶岩上では100年も立てば、また、森林で覆われるのでした。溶岩上に真っ先に侵入するオオバヤシャブシという樹木は、根に根粒菌が共生して、空気中の窒素を補給してくれるので、成長が早く、したがって土壌の形成も速やかです。土壌形成が進むと、樹木は切り払われて、畑となり、さまざまな作物が栽培されます。ですから、三宅島は不毛の地などでは決してありません。
 三宅島には鳥類が多く、トカラ列島と隔離分布をしているアカコッコや、スダジイの原生林に生息するオーストンヤマガラもいます。このオーストンヤマガラは本土のヤマガラの変種で、ヤマガラよりもやや体が大きめです。このヤマガラはスダジイの実を食べませんが、オーストンヤマガラは、スダジイの実を食べます。オーストンヤマガラは、大きな果実のスダジイの実を食べるのに適応して体が大きく、嘴も大きくなったものと考えられています。
 オーストンヤマガラは、貯食といって、スダジイの実を根の隙き間や枝や幹に埋めて、あとで利用するという行動を取ります。写真ではちょっとはっきりしないかも知れませんが、オーストンヤマガラが木の枝の上で、スダジイの実を両足でしっかりと支え、嘴でつつこうとしているのが見られます。もう1枚の写真には、かわいい女の子の手の上に乗った可愛いオーストンヤマガラが写っています。これらの2枚の写真は、オーストンヤマガラの研究をしていた東大の樋口さんが撮影したものです。樋口さんの講演を聞いた時に、感激して、ねだって、コピーを取らせていただきました。
 三宅島は、鳥類の種類も多く、のどかで平和な島です。周りを取り巻く海には、暖流のせいでサンゴも存在するそうです。現在、沖縄で米軍基地をなくす運動が進んでいますが、三宅島にも米軍の飛行場はふさわしくありません。


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