ひとりごと −その6−



韓国−北朝鮮首脳会議に思う


 1日延期された首脳会談に、ソウル市民の「50年待ったんだ。1日なんて問題じゃない」というきっぱりとした明るい回答に、嬉しく思った。 歴史を長い視点で見るならば、日本と朝鮮半島の人々とは強い結びつきがあって、過去の忌まわしい戦争の記憶もさることながら、日本民族のルーツの半分は朝鮮半島であろうという確信のようなものが私にはあって、兄弟のように感ずるが故に、率直に喜ばずにはいられない。

 朝鮮半島が世界政治のハザマで不幸な分裂を余儀なくされたことは、日本にも大きな責任がある。古くは豊臣秀吉の朝鮮出兵、そして戦前の八紘一宇という日本民族優越の思想によるアジア支配の歴史を、我々は思い出さなくてはならない。日本人は、朝鮮半島の人々の、誇りと、富と、人命と、そして家族の絆を奪ってきたのだ。 本来ならば、日本は、韓国―北朝鮮両国に過去の非を認めて友好を誓うと共に、両国の仲を取り持たねばならない責任があったはずである。 だが、我が国は、まともな謝罪すらできないばかりか、飢饉で苦しむ北朝鮮に、余って困っている米すら送れない。そして「神の国」発言が現首相から飛び出すに至っては、なにおかいわんやである。「神の国」とは、かつて日本が朝鮮半島を支配した思想である。森首相は恥というものを知るべきである。

 金大中氏は一時政治の表舞台から引退したが、南北統一の思いを遂げんがために、再び大統領となって、この歴史的な会談に臨む。その心中や如何ばかりか。 私は、13日の夕刊に載った両首脳の握手する写真を見て、感動せずにはいられなかった。私は、彼らの「感動」を多少なりとも共有できたと思う。 このまま、素直にことが運ぶとは思わないが、どうか、この時の「感動」を忘れずに、祖国統一に向かって進んでほしいと、心から願うばかりである。
 2000年6月14日

追伸
 この原稿を書いてから帰宅したら、共同宣言についての報道が丁度始まったところだった。そして、その内容に驚愕し、新たな感激に自然に涙が溢れてきた。共同宣言の、何と率直なことか  これこそ、自国民に責任を持つものの、確固たる意思表示なのだ。歴史的に見て、これほど率直且つ具体的で善意に満ちた「宣言」を、私は知らない。 我が国の歴代の首相が他国と結んできた「宣言」と比較検討してみると良い。その違いに、改めて驚かされることだろう。その違いの根元は何か! それはつまり、日本の場合は「国民を欺く」ためのものであり、朝鮮半島両首脳の共同宣言は「国民の希望」を現したものなのだ。

 日本の不道徳な指導者のことは忘れて、私はしばらく、この感激に酔っていたい。
 6月15日0時
(理学部 河合利秀)  


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