中田喜直先生を追悼する
名古屋大学職員合唱団 河合利秀
私は名古屋大学職員合唱団の団長という立場から、先ごろなくなられた中田喜直氏を追悼する文書をここに記するものです。
中田先生との出会いは突然でした。三重県松阪市で行われた「本居長世」コンクールにおいて、私たちの演奏に、過分なるお褒めの言葉をいただき、強く推薦していただいたことで、賞をえる栄誉によくしました。
本居長世は「七つの子」「赤いくつ」「汽車ポッポ」などの童謡でよくしられている作曲家で、金田一春彦氏らとの交友でもその名を聞かれた方は多いでしょう。 私たちはちょうど混声四部合唱による「七つの子」を練習していたので、これ幸いと松阪まで遠征したのでした。 エントリーにあたって、平和を志向するオリジナル曲作りや、日本の唱歌や世界の唱歌を四部合唱で歌い続けてきた私たちの合唱団の略歴と活動を紹介しました。 コンクールでは、私たちより遥かに上品に、あるいはダイナミックに演奏する団体が多かったにも関わらず、私たちのつたない演奏を強く支持してくれたのは中田先生でした。
コンクール会場は本居長世の柔らかい人柄や作風を愛でる人たちが集まり、私たちの演奏にも大きな共感をよせていただきました。むしろ私たちの方が乗せられたと言ってよいでしょう。
一曲目の「七つの子」が終わると、最前列で一生懸命拍手してくれたおばあさん、二曲目になっても一節毎にうなずいて聞き入ってくれた純朴な女性の顔を、今でも忘れることはできません。
私たちの、あまり練られてはいない素人の声の響きは、素朴な印象を与えたのではないかと思います。 そんな私たちが、プロ顔負けの素晴らしい演奏をされた団体をさしおいて受賞できるとは思わなかったので、中田先生を始めとする審査員の先生方に大いに励まされると同時に、私たちの歌に対する取り組みを評価していただいたことに、一同おおいに感激いたしました。
中田先生は、ことあるごとに、日本の童謡唱歌をもっと歌ってほしいと訴えておられました。童謡唱歌に歌われている人の暖かみや自然の美しさを感じ取れれば、若い人の荒んだ心をどれほど慰められるかと、最後まで演奏活動に力を注がれておられたとのことです。
中田先生の作品を含め、日本の美しい唱歌を、私たち合唱団の心の歌として育み、歌い続けることを誓いつつ、中田先生のご冥福をお祈りするものです。
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