ひとりごと −その2−



「沈まぬ太陽」に見る醜い人々の群


 「沈まぬ太陽」の舞台は言わずと知れた、某国(亡国?)の国営?航空会社である。御巣鷹山にジャンボを墜落させ、520名の命を奪った、あの○○航空である。
 その航空会社の醜い人々の列は、まさに魑魅魍魎。小説ではあるが、入念に現実を取材したものであって、決して空想ではない。実話である。
 我が国を代表する企業のあまりもの醜さに息を呑み、徹底的にいじめられる主人公が、どうしてそのような状況の中でも挫けることなく正義を貫けるのか。頑張る主人公によって、我々読者の正義感や良心は、大いに励まされる。
 読み進に連れ、いつしか僕の意識は主人公と一体化し、怒りや悲しみや、そして喜びを共有しているのだ。

 舞台となった航空会社の権力に寄生する醜い人々の群れは、小さい頃から競争を強いられ、競争に勝つことが評価されて、力を合わせることの大切さや、礼節、思いやり、いたわりなどの「人格」が育てられていないと感じる。
 「立派な人になる」ために大学にいくのではなくて、「立派な会社に入る」ために大学にいくという、目的意識の変化は、学ぶことの意味を知らない世代の拡大再生産であり、こうした人々が膨大に存在することを、この小説によって思い知らされる。

 私たちの大学は、このような醜い人々を、世に送り出してはいないだろうか。一度ゆっくり考えたい。
(理・河合利秀)


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教職員委員会 ひとりごと
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