ひとりごと



日本の科学技術は衰退している?


 東海村の臨界事故やH2ロケット打ち上げ失敗によって、日本の科学技術の信頼性が大きく揺らいでいます。
 東海村の臨界事故は、海外に原子力発電に関する技術の困難性を印象づける結果となりました。日本の科学技術に対する海外の評価は、極めて高い品質管理のもとに熟練した作業者が熱意を持って事業に携わっている、という最大級のものです。「原子力はまだ人類の手に負えない技術ではないだろうか。最も厳格に管理されているはずの日本において起きた事故であるからこそ深刻なのだ。ましてや、管理や教育の行き届かない国々において原子力を扱うなど、到底困難である。」という反応です。
 このような反応は、日本の科学技術を海外の人々が過大評価しているためだと思うのですが、彼らは日本の電化製品や自動車、カメラなどの工業製品をみて、日本の科学技術を非常に高く評価しています。その日本で、臨界事故がおきた。スリーマイルやチェルノブイリの事故は不幸な出来事だったが、たしかにありそうなことだと思われた。だが日本は違う。と世界中の人々が心配しているのです。
 このように、世界各国から高い評価を受けているはずの、日本の科学技術が、今や、危機に瀕しています。JR関西新幹線のトンネルコンクリート落下事故は、安全宣言の後も新しい欠陥が次々と判明しました。世界で最も安全だと豪語していた新幹線が危ないのです。H2ロケットにしたって、打ち上げ費用は高いが安全性(安定性)は世界一というのが自慢でした。それが立て続けに2度失敗し、信頼性を失いました。こうした事実を並べていくと、日本の科学技術は確実に衰退している。一体、日本の科学技術はどうなってしまったのでしょうか。
 それは、苛烈なリストラや合理化によって本来必要なものなで削ってしまった結果であると私は思います。現場を無視しためちゃなリストラや合理化によってベテラン技術者は職を失い、鍛練の時間も奪われた現場の技術者の士気も低下して、技術力を急速に失う悪い循環に陥っているのではないでしょうか。
 JRの調査や臨界事故で浮かび上がってきたことは、最近のリストラ(JRは分割民営自体が最大のリストラであった)によって必要以上に人員が削減された結果、不正常な形態や業務遂行に支障をきたす状態が日常化し、保線能力を失ったという実態でした。
 原子力安全委員会という組織はあまりにも貧弱なため、まともな監査や調査が実施できないことが今回の臨界事故で明らかになりました。本来必要な部署に十分人手を割いていないことが明白になったのです。
 科学技術創造立国を目指すとなれば、まずは十分な人手を確保することから手を入れてほしいものです。大学の独立行政法人化も合理化リストラ路線を大学に持ち込もうとしているものです。これでは科学技術創造立国など及びもつかないと思いませんか。
(理・河合利秀)


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