鈴鹿山脈鎌ヶ岳(1,161m)



−鈴鹿中南部の秋山を訪ねて−
1998年10月24日(土)


登山前日
 前日の雨は、翌日も雨天の天気予報を誰も疑わなかった。満に一の希望を抱いていたが、むなしい願いだとあきらめて山に登る準備もしないで就寝。翌朝、目覚めると雨の音がしない。急いで飛び起きて電気釜のスイッチを入れる。冷凍食品などで急遽弁当を作る。その間にワンゲルのOさんと連絡を取って、決行する旨打ち合わせをする。まもなく、全参加者から問い合わせが集中する。誰もが迷う迷惑な天気だ。

集合、出発
 予定を15分ほど遅れて、名大前バス停に午前7時15分に集合し、吹上インターから都市高速に乗って、東名阪を四日市インターで下りる。途中、木曽三川辺りから、多度山系や鈴鹿の峰々が展望できる。「大丈夫、間違ってはいなかった」と安堵する。四日市インターを8時に下りて、菰野からミルクロードを左折して、しばらく走って右折すると宮妻渓谷が右手の雲母峰と左手の入道岳に挟まれた谷間を形成していて、遠目にも良く判る。やがて辺り一面にお茶畑が展開する。遅霜などの被害から新芽を護る扇風機を取り付けた電柱が林立する『水沢茶』(伊勢茶)の名産地水沢地区だ。そこから登山口の駐車場までは狭く、曲がりくねった舗装路を15分ほど登る。予定通りの8時30分に到着。先行していたMさんと合流する。登山客は私たちだけのようだ。

いざ、登ろう!
 宮妻渓ヒュッテの100mほど上流が舗装林道の終点だ。道路の左手に2カ所、計30台程は駐車可能な駐車場があり、その下の樹林の中にバンガローが幾棟も建っている。雨は止みそうな霧雨程度だろうか。スパッツを付け、昨夜来の雨で笹やブッシュが濡れていて洋服が濡れるのを防ぐために雨具の一部を付ける者、最初から半袖で出発する者、体調や体温に個人差はある。林道を5分も歩くとカズラ谷の入口に着く。路はこの右手の谷間を入って行く。ツバキやカシ、ヤマモモやユズリハ等の広葉常緑樹林に入り、暗く感じる。路は左手にジャリガ谷を見て右手にカズラ谷越しに雲母峰が望める南面尾根である。登り始めるとすぐに暑くなる。30分ほどで、雲母峰への分岐に至り、40分で見晴らしの利く尾根筋のカシやシイの樹間で休憩し、着ている物を1枚脱いで調節する。雨は完全に止んだ。それでも灌木が濡れているので、衣類は湿り気味だ。

岳峠へ
 岳峠から雲母峰への東稜線に至ると周囲は全て落葉樹に変わる。今年は平年より暖かく、紅葉は遅れているようだ。モミジの多いこの谷間は、春の新緑や秋の紅葉が美しい。痩せ尾根を30分ほど歩き、2時間ほどかけて目指す岳峠に到着。その直前5分間、2mほどに伸びたクマザサのトンネルを潜ぐらなければならない。ササで濡れるし、前方は見えないし、不快なコースである。峠は直ぐ右手から長石谷からのコースと併せて県境の主稜線に立つことが出来る。鎌ケ岳の南面下の花崗岩を見上げながら、そこで昼食にする。

鎌ケ岳山頂へ
 食後、山頂をピストンする。山頂までは15分。初めて出会った登山者は若い2人連れで武平峠から登ってきた。全員の写真を撮ってもらう。さらに長石谷から地元の中高年2人の登山者が登ってきた。この間の二つの台風のもの凄さを語ってくれた。雲が低く垂れ込めていて見通しが悪い。それでも時々、雲の切れ間から四日市や伊勢湾を眺めることが出来た。山頂をあとに岳峠に戻る。

鎌尾根に入る
 天候は良い方に向かっているので、予定通り鎌尾根を縦走することにする。三重県と滋賀県の県境を成す稜線で、かっては槍ケ岳の鎌尾根に倣って銘々されたように、花崗岩のナイフブリッジが恐かった。が、今は恐怖感を伴う場所は少なくなっていた。花崗岩が風化して沢筋に流れ落ち、尾根がなだらかになり、そこに樹木が成長して谷間を埋め、隠し、安定感が増したためかもしれない。それでも登り初めの鎖場はあったし、風化した急峻な花崗岩の足場の悪い箇所もある。アカヤシオやシャクナゲの老木がブナの林に混じって見事である。

水沢岳、峠へ
 1029mの水沢岳を過ぎると峠はすぐだ。稜線上の山頂から南に急峻な下りを一気に駆け下りると、水沢峠に着く。古の伊勢の国と近江の国を往来する峠だ。今は、静かな草深く樹木に覆われて往時を忍ぶよすがもない。峠から東に林道を目指して下ると、支稜線から流れ落ちる滝が、昨夜来の雨を集めて垂直に落ちている。手ですくって喉を潤す。

台風の威力
 峠からの下りは、台風の爪痕がすさまじく 年ほどの杉の植林をなぎ倒し、引きちぎり、沢筋の樹木を根こそぎ引き倒すというすさまじさである。このために倒木を潜り、跨ぎ、ある箇所は滑り台で、まるで障害物競走に参加しているようにして下る。3カ所から4カ所ほどの被害を目の当たりにしながら難儀して峠から1時間ほどで林道に出る。林道は崩落防止の工事用のため、所々で舗装されている。

駐車場に戻る
 15時30分に駐車場に到着。Oさんの車がパンクしている。長らく車で登山をしているが初めて経験する。スペアタイヤに交換し、帰途につく。東名阪、都市高速と経由し、2時間ほどで豊田講堂に到着し、解散する。
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教職員委員会 鎌ヶ岳ハイキング
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