ニュースに一喝
−その23−


不意打ち


  今度、名古屋を襲い、新川の堤防を決壊させ、庄内川や天白川の水を堤防から溢れさせた集中豪雨は、前もってほとんど報道はありませんでした。その日は勤めに出ていて、帰ろうと思ったら時既に遅しといった人も多く、ホテルは満員、仕方なく、駅で過ごしたという人も多かったと聞きます。私は虫の知らせがあったわけではありませんが、いつもより丁度1時間早く切り上げて帰ったお陰で、自宅辺りについたとき、道は川になりかけていましたが、午後6時頃、無事に帰り着き、何も知らないので、それから又外出、濡れてもいい服装で行きましたが、帰る頃には、歩道も20センチから30センチ冠水し、車の起こす波が打ち寄せていました。名古屋駅前あたりのことです。よく降るなぁとは思いましたが、それでもまだこんな大変なことになるとは思ってもみませんでした。正に、不意打ち、アレヨアレヨという間に600ミリに近い雨がたった1日2日の間に降り、なんと、年間雨量の3分の1に当たるというではありませんか。
  伊勢湾台風の時もそうでした。あんな恐ろしいことになるとは事前の報道では少しも思えませんでした。私は、丁度大学の1年生でした。次の日から前期の試験があることになっていたので、のこのこと自転車で大学に出かけたものです。そうしましたら、校舎は傾き、雨漏りし、もう、使いものになるところは滝子の教養部にはほとんどなく、前期試験は流れてしまいました。その足で、生まれて初めて、トラックの荷台に乗せて貰って、南区の浸水地区に救援に出かけ、生まれて初めての筏こぎを経験しました。その時の様子はいまだに目に浮かびます。鶏や豚の死骸がぷかぷか、まだ、異臭が漂うところまでは行っていませんでしたが、あの中にひょっとしたら…と思うとぞっとします。思わず余分なことまで申しましたが、不意打ちには参ります。
  今度も、避難勧告の出たところの方々が言われるには、大雨の最中に、既に膝や腰の辺りまで水が出てから、避難しろと言われても、何とも成りません。家で寝ていた方がいいということになるのも、無理からぬ事です。事態の深刻さがのみ込めていないのですから。
  それにしても、新川の決壊堤防の空中からの写真を見ていて、私は全くの素人ですが、切れるべくして切れたように思えて成りません。何とも頼りない堤防です。水が溢れたなら仕方有りませんが、あんなふうに切れたらたまりません。後の報道によれば、付近の住民は、前から、恐怖を感じていたというではありませんか。
  被害にあった方々は誠にお気の毒としか言いようがありません。どうでもいい報道は結構ですから、やっぱり、もっと大事な、こんな大変になるようなことは予想外だったなどと言わずに、教えていただきたいと思います。不意打ちは困ります。
(田)  

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教職員委員会 ニュースに一喝
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