名古屋大学地ビール(博石館ブルワリー)工場の見学記
行ってきて、良かったです
矢田元彦
5月13日(土)晴天。
朝9時、北部生協玄関に、組合員とその家族そして組合員OBの8人が集合する。行き先は、岐阜県恵那郡蛭川村田原の「博石館」。博石館は、名古屋大学地ビールを造る「博石館ブルワリー」の工場であり、世界の貴重な鉱物を展示する博物館でもある。周囲は匂うがごとく、緑豊かな若葉青葉が連山を包んでいた。日ごろの「ストレス」が、解消する心地であるぞ。今日は、一日のんびりと参ろうぞ。
恵那・石の里は「ようこそ、おいでんさい」と招き入れる。最初に心を引き付けたのは、坂村真民の碑である。真民の筆によるものであろう。「二度とない人生だから」の文字が踊った、味わいのある詩碑がある。 次は、本日の目的である、名古屋大学地ビールを造る博石館ビール工場の見学である。「名古屋大学地ビールは職人気質の国、英国製醸造装置を使って伝統的な製法で造る、こだわりのビール」である。
「名古屋大学地ビールは地ビールの最高峰を行く博石館製のビールです。岩が磨いたうまさです」の宣伝を、わが喉で確かめることと相成る。博石館ブルワリーの丹羽工場長の説明を聞きながら、5種類のビールを試飲した。「麦芽ブレンドによって香ばしいコクと風味に加え、ほどよくホップが効いたペールエール。燻煙麦芽の香りが、ほのかに効いたスモークエール。爽やかな飲み口とオレンジのような趣のゴールデンエール。麦芽のコクとホップのシャープさが絶妙に調和したラガー」そして、最後は、こだわりの地ビールが出た。その名前は、「スーパーヴィンテージビール、アルコール度数14.3%」その味は、ワインスタイル。現代の逸品であろう! まさに、「岩が磨いたうまさである」。丹羽工場長の説明に、味わいながら、いつしか酩酊する。丹羽工場長の説明は続く、「6か月の長期熟成を経て、素晴らしい高級のビールが出来ました。スーパーヴィンテージビールの原料の仕込み水には、御影石の岩盤よりしみ出した水を使いました。大麦は、英国産ペールモルト、ホップはチャレンジャーを使い仕込みました。ビール酵母と、ワイン酵母を使いアルコール度数14.3%という日本最高水準のビールを造りました」
口の中に入れると、口中は滝の激しさを感じる。一口一口じっくり重ねるほどに、岩が磨いた、深くて高濃度なビールに酩酊は深まるばかりである。心を開いて工場を出れば、澄みきった蒼い空。そこで拙句を詠む。
若葉殿 よきにはかれや 酩酊す
若葉して いよいよ蒼く 山の風
小道に沿って小さな円形の美術館が立ち並ぶ。「片影に尼僧出で石の美術館」
「ムウ」と呼ばれるティールームがあり、建物を突き出て大空に伸びる石柱と根元に、石のソファがある。
天空に 石柱あり 薔薇の風
敷地内は石また石のアート。博石館と駐車場を結んでいる歩道橋も石造り。
木漏れ陽の 石の歩道橋 若葉風
当館の見所は、「水晶、トパーズ、緑柱石、蛍石など120種類」の展示であろう。また、「クフ王の10分の1サイズ(高さ15m、一辺23m)のピラミッド」がシンボル。内部にはエジプトからピラミッド石、広島から被爆石が安置され、世界平和の祈りが込められている。さらに、鉱物館は壮大な石造建築である。人類の貴重な文化遺産も博石館に寄贈され、展示物に名を連ねている」。
博石館を出て、「美濃福岡の観光の隠れた穴場〈ローソク温泉〉」に向かった。〈ローソク温泉〉は、8万坪の自然の中に、静かに息づいていた。「清らかな谷川の流れ、静寂な空気、天然ラドンが大気に放散し、森林浴と共になんじゃもんじゃ、笹ゆり、山つつじなどの植物たちに大歓迎される」。
おわりに〈ローソク温泉〉の由来を紹介しておこう。「大正13年名大医学部病理学教授(ヅヅガ虫病原体発見者)であった林直助がこの地に入り、ラヂウム開発研究がなされた。日本屈指のラヂウム泉であるため『この温泉を社会に有効に出せ』という強い希望で昭和20年に開業する。俗化させないため昭和58年秋までローソクの灯をともしていたのが〈ローソク温泉〉の由来である」とパンフに記されている。現在は林直助の息子、周次郎さんが経営されている。一時は「ゴルフ場にしたい」と業者が交渉の打診にきたそうだが、お断りして、明治のまんま今に伝える。
新緑の一日を有意義に行って来ました。参加者一同は、異口同音に「大満足でした。また、ぜひ連れてってください」の言葉に励まされて、また、次の企画を考えようかな。
日の長い初夏の夕映えは、参加者の背中をあたたかく照らしていつまでも見送っていた。
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教職員委員会 名古屋大学地ビール工場見学記
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