かけはし2月号の主張
名古屋大学平和憲章13周年を迎えて
心の「生きてはたらく規範」の再点検を
名古屋大学に平和憲章が構成員の過半数(批准率58%)の賛同で制定されてから、この2月5日で13周年を迎えます。
制定後の13年間の私達を取り巻く状況は決してよりよい方向に向かっているとは自信を持って言えない状況にあります。
世論調査でも社会が悪い方向に進んでいると感じる人が増えています。
この様な時こそ平和憲章で確認した「「物質的な豊かさ」をそなえるようになった我が国でも、その反面の「心の貧しさ」に深い自戒と反省が迫られている。戦争のない、物質的にも精神的にも豊かで平和な社会の建設が切に求められている。」事に対して、「われわれは、この憲章を、学問研究および教育をはじめとするあらゆる営みの生きてはたらく規範として確認する。」が重要な意味を持っていると思います。
平和憲章が生まれた当時の背景には第三次世界大戦を想定した全面的な核戦争の具体化がありました。70年代の終わりから西側陣営の軍事関係者より、85年危機が強く主張されるようになりました。これは85年には当時のソビエトの軍事力がアメリカの軍事力を上廻り、西側に戦争を仕掛けてくるので「第三次世界大戦」が勃発する事は必至というものでした。冷静な軍事専門家はそれだけの軍事力の増強、維持はソビエトには困難と主張していましたが、その声は無視され、85年危機論はレーガン大統領による、やられる前にやる式の軍事拡張となり、スターウォズ計画と言われた戦略防衛構想(83年)となり、勝利できる核戦争の準備が進められます。
世界情勢も戦争の危機を感じさせることが続き、中国がICBM実験(80年)、フォークランド紛争、イスラエルのレバノン侵攻(81年)、アメリカのグレナダ侵攻(83年)が起き、日本では中曽根首相の「不沈空母」発言に代表される軍事強化が続いていました。
この様な核戦争を想定した軍拡競争は第三国が漁夫の利益を得ることがないように攻撃するシミュレーションも言われるなど、これまでの戦争被害ではなく、地球に「核の冬」を招き、核戦争には勝者も敗者もなく人類滅亡しかないことが、研究・科学者から強く主張されます。
平和憲章はこのような時期に生まれたのでした。「真理と平和を希求する人間の育成」を教育の基本としている大学にいる者としてどうあるべきかを他人に求めるのではなく、自己のこととして考える3年間の取り組みの末、たどり着いてのが平和憲章制定でした。
平和憲章制定後の現在は残念ながら、その内容と意義の継承はうまくいっているとは言えません。
伝える努力が必要ですが、ただ単に「平和憲章」があるぞ式の取り組みではなく、知る、知らせる、共に考えることによる伝承に取り組むことが重要になっています。
戦争の危機はソビエトの崩壊等で解消したわけではなく、依然として、一方的勝利を目指す軍事強化が日々進められています。そこには民生技術の軍事技術転化が重視しされ(防衛庁、日本の国防、98年)進められています。
また、「心の貧しさ」では言い表せない社会変化の激しさにも今こそ、一人ひとりの自覚的自己規律による「生きてはたらく規範」を明記した平和憲章は制定当時の歴史的産物だけで終わるものでない内容を持っています。
名大生協では三年間のカレンダー付きの平和憲章ポスターを作成し、無料で配布しています。北部厚生会館2階組合員コーナーにてお渡ししています。
(松岡)
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